薬屋

子供の頃、半年に一度個別訪問に来る薬屋さんがいた。今では珍しくなった置き薬屋さんである。いつも紙風船をもらってうれしかった記憶があり、赤い箱に熊の絵が描かれていたのでみんな熊さんと呼んでいた。90ccのカブに四角い箱を積んで奈良の橿原だか五条だかの辺りから来ていた。20年近く前に祖母が他界したしばらく後に熊さんはやってきて、いつもの様にバンドエイドしか減らない我が家の薬箱の中身を点検し、ふと奥の仏間に目をやり、祖母の写真に気がつき香典を置いていったことがある。
都バスのラッピングに富山のくすりがあり、ふと思い出した。